旅のライブ情報誌 「Please(プリーズ)」1月号
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3「仙巌園」の「御殿」で、2018年5月末から展示中の再現されたロシア皇帝の大壺。当時の資料のない中、明治への挑戦だった。 島津家別邸の仙巌園へ、一対の壺に会いに行った。 ただの壺ではない。帝政ロシア最後の皇帝ニコライ2世に、旧薩摩藩主の島津忠義が贈った壺を再現したものだ。十二代沈壽官が手掛けた仕事を、120年の時を経て、ひ孫の十五代沈壽官がよみがえらせたのである。 人の腰の高さほどもあるそれは、御殿の一室で柔らかな光を放っていた。象牙色の艶やかな生地に、華やかな金彩。正面にはニコライの頭文字をあしらった紋章も見える。彼はこの贈り物をたいそう喜び、サンクトペテルブルクの宮殿(現在のエルミタージュ美術館)の玄関に飾った。その後、この大壺は、ロシア革命で傷を負うものの、長く門外不出の名宝として残されてきたのだった。 ところが驚いたことに、その現物がちょうど今、鹿児島へ初の里帰りをしている。鶴丸城跡の「黎明館」で開催中の、「華麗なる薩摩焼_万国博覧会の時代のきらめき_」において、幕末から明治期の約250点の薩摩焼とともに紹介されているのである。ニコライ2世の戴冠祝いに島津忠義が贈った、十二代沈壽官による「錦手四君子図茶壺形蓋付壺」。1896年頃の作。ロシア エルミタージュ美術館©The State Hermitage Museum, St. Petersburg, 2018 / Alexander Koksharovロシア皇帝に贈られた作品1876年、アメリカ初の大規模万博に出品された「錦手獅子乗三足香炉」。イギリス ヴィクトリア&アルバート博物館©Victoria and Albert Museum, Londonフィラデルフィア万博に出品せんがんえんただよしちんじゅかんれいめいししのりちゃつぼがたふたつきロシア皇帝の壺が初の里帰り

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