旅のライブ情報誌 「Please(プリーズ)」7月号
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18むら おさちょうたくまつさい し 九州は、「仮面文化の十字路」と呼ばれる。中国大陸・アジアを起源とする仮面文化と南島・黒潮文化経由の仮面文化が伝わり、交わりながら醸成され、日本の「中央」へと伝播していった地点に位置するからである。その古形は、再び九州へと還流され、伝承された。九州民俗仮面美術館館長  由布院空想の森美術館 アートディレクター文=高見乾司Text by Kenji Takami「三宝荒神」の中央神・天之神。推定桃山時代。霧島修験の行者集団の中に仮面製作者がおり、霧島地方に分布した。(九州国立博物館蔵[由布院空想の森美術館・旧蔵]) 九州の山深い村の神楽を訪ねると、その村の人によく似た仮面神に出会うことがある。仮面とは、一族の長老や村長、地域の英雄などが長寿を全うしたり、英雄的な活躍をしたりして「神」として祀られたものであるから、それらの仮面神は、その土地の祖霊神であることがわかる。 「民俗仮面」とは、中世に芸術的完成をみた「能面」とは異なり、民衆の信仰と生活史を反映して素朴でありながら力強く、独自の造形性をもつ仮面群である。 かつて日本列島には縄文時代の「土面」と呼ばれる仮面祭祀が存在した。以後、およそ1、000年の空白期を経て、仏教伝来とともに大陸の風をまとい、国家創世の物語を語り継ぐ仮面文化が花開いたが、底流には列島基層の記憶・造形性・信仰などがひそみ、生き続けた。 村の祭礼や神楽などに現れる先導神、荒ぶる神・荒神、道化神などの仮面神は、九州の風土が彫琢した「山・森・里・海の精霊たち」であり、古層の神々の姿である。さんぽうこうじん

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